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独立行政法人国立病院機構 まつもと医療センター

胃がんについて

○胃がんは胃の上皮に発生する代表的な悪性腫瘍で、良性の上皮性腫瘍は胃腺腫、また、上皮以外に発生するものは粘膜下腫瘍といわれ、GIST(=消化管間葉性腫瘍)や平滑筋腫などがこれに当たります。

○ 胃がんは、胃粘膜内から発生し、胃の5層構造と言われる①粘膜層→②粘膜下層→③固有筋層→④漿膜下層→⑤漿膜というように 胃の外側へ向かって進展(=浸潤という)していきます。

○胃がんの進展形式からの分類で浸潤が、①粘膜→粘膜下層までの2層までに留まっているものを早期胃がんといい(リンパ節転移は問わない)、②浸潤が3層目の固有筋層以深に至ったものを進行胃がんといいます。

○また、胃がんには細胞の集まった組織の形の違いにより、①細胞同士が集合する傾向のある分化型がんと、②バラバラになる性質のある未分化や低分化がんとに分かれ、未分化や低分化ながんほど、浸潤や発育が早く予後が悪いと言われています。

胃がん統計について

○胃がんは人口動態統計によるがん死亡データ(1958年~2017年)1)によると2017年の統計では、男性で死亡原因の2位、女性で4位、男女併せて3位になっています。胃炎の減少や食生活の変化によって減少してきています。

○ 一般的に早期胃がんの5年生存率は2018年で95%以上、進行胃がんの5年後生存率は限局している場合が全体で70%、近くのリンパ 節に転移のある場合が 50%、遠隔転移がある場合(遠いところのリンパ節や肝臓・肺・骨髄への転移など)が5%とされています。

胃がんの危険因子について

○ 胃がんになる危険因子としては、 ①高塩分食品の摂取や喫煙等のライフスタイル ②ヘリコバクター・ピロリの感染等、環境要因の関わりが大きいとされています。また、実際に高塩分の食事を食べさせたマウスにヘリコバクター・ピロリを感染させるとがんが発生する報告もされています2)。

胃がんの症状について

○ 早期胃がんの多くは無症状であり、がんの進展や大きくなるにしたがって症状が出てきます。胃炎などの症状と同様に上腹部痛・不快感、悪心・嘔吐、上腹部膨満感など一般的な症状が多く、胃のバリウム検査だけでなく、上部消化管内視鏡による検診や、ABC検診などのヘリコバクターの感染、萎縮性胃炎などの慢性胃炎を拾い上げる試みがされており、胃検診による早期発見が望まれます。 上腹部の症状があったときは、一度上部消化管内視鏡をおすすめします。

胃がんの治療法

○ 早期胃がんのうち分化型がんでは、がんの大きさが 2cm 以下で(病変内 に潰瘍がなく)、がんが第1層の粘膜内にとどまり、胃潰瘍の痕がなく、CTなどでリンパ節転移がないことが確認された場合は内視鏡的治療が適用となります。(病気によっては対象を拡大した病変として内視鏡的に切除することもあります)

○胃の近くのリンパ節転移がある早期胃がんや、粘膜より下層の浸潤のある早期胃がん、進行がんについては外科療法がよいとされています。

○ 進行胃がんについては、手術の前や後に化学療法が併用され、病変を小さくすることがあります。

○内視鏡的切除の方法としては ①内視鏡の鉗子孔からリング状の電気メス(スネア)を出して、病変を局所注射で盛り上げて絞り上げながら高周波電流で焼いてとってしまう内視鏡的粘膜切除術(EMR)と、 ②小さな電気メスで病変の周囲を切って、その後病変の粘膜下を剥離して全体を切除する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)があります。 後者のESDに関しては潰瘍がなければ大きさに関係なく切除できる利点がありますが、大きくなれば、手技が難しく外科手術並みに長時間に及ぶこともあります。

○外科的切除としては、病変が胃の入り口(噴門部)からの距離と進行具合番問題であり、胃の出口(幽門部)に近く、胃の2/3ぐらいまでに位置するものは幽門側胃切除術、それより1/3より口側にあるものや進展範囲が広いものは胃全摘・噴門側胃切除術・脾臓摘出術・他の臓器(膵臓など)の合併切除などが考慮されます。

参考文献

国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」 人口動態統計によるがん死亡データ

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