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独立行政法人国立病院機構 まつもと医療センター

肺がんとは

 肺がんは、肺に発生する悪性腫瘍で肺そのものから発生したものを原発性肺がんといい、通常肺がんといえば原発性肺がんを指します。肺がんは、早期であれば手術が最も治癒の期待できる治療法ですが、発見された時には進行している場合が多く、手術のほかに放射線治療や抗がん剤治療、さらにこれらを組み合わせた治療が選択されます。全身のがんの中では、最も治療が難しいがんの一つです。

症状

 肺がんに特徴的な症状はありません。肺がんの種類、発生部位、進行度によって症状は異なります。せき、たん、倦怠感(だるさ)、体重減少、胸痛などさまざまですが、これらの症状はほかの呼吸器の病気でもみられます。無症状であることも多く、検診や、他の病気で胸部エックス線やCTを撮ったときに偶然発見される場合もあります。

診断

 肺がんの検査には、まず肺がんであることを調べる検査として、がん細胞を検出する検査があります。胸部X線写真やCT検査で肺がんが疑われた場合に、痰検査や気管支鏡を用いた細胞検査(病理学的診断)を行ったり、胸水(胸に貯まった水)が貯まっている場合は、針を体内に刺して胸水を採取しがん細胞の有無を調べたりします。肺がんであることが確定した場合、肺がんの進行度(がんの広がり)を調べる検査を行います。全身CT、PET検査、脳MRI、骨シンチなどが用いられます。肺がんの種類としては、主に小細胞がんと、非小細胞がん(小細胞がん以外のがん)に分けられ、それぞれ治療法が異なります。進行度は、転移のないものから進行がんまで4段階に分けI期、II期、III期、IV期に分類します。

治療法

 極めて進行が早く、発見された時にはすでに転移している場合が多い小細胞がんと、小細胞がんほど早く進行しない非小細胞がんでは、治療法が異なります。小細胞がんは、発見時にはすでに転移していることが多く、遠隔転移(脳や骨、肝臓、副腎、がん性胸水など:進展型と呼ばれる)がある場合は、抗がん剤治療を行い、遠隔転移がない(胸の中のリンパ節転移までに留まっている:限局型と呼ばれる)場合は、抗がん剤と胸部放射線照射の組合せが用いられます。抗がん剤はシスプラチンという抗がん剤と、イリノテカンまたはエトポシドを組み合わせた2剤併用療法が用いられます。限局型では胸部に1日2回、週5日間で3週間放射線照射し、同時にシスプラチンとエトポシドを併用する抗がん剤治療を行います。抗がん剤治療は3週間~4週間を一つの単位(1サイクルまたは1コース)として4回繰り返します。

 非小細胞癌は、I期では手術のみ、II期から手術可能なIII期までは手術後に抗がん剤治療を組み合わせるのが一般的です。最近では胸腔鏡(内視鏡)による手術も広く行われています。手術が不可能なIII期では胸部放射線照射(1日1回、週5日間を6週間照射)と抗がん剤2剤を組合せた併用療法を行うこともあります。放射線照射ができないIII期、IV期では抗がん剤治療を行います。

 近年、肺がん領域の抗がん剤治療はその進歩が著しく、毎年のように新薬が発売され、治療法も目まぐるしく変化しています。これまでと同様の抗がん剤に加え、分子標的治療薬と呼ばれる新しい薬が開発され、人によっては劇的な腫瘍縮小効果と延命効果が得られています。また、免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる、新しいタイプの治療薬も肺がん領域で使われるようになってきており、肺がんの薬物療法による余命延長効果は年々長くなっています。しかし、新薬の薬価は等比級数的に増加しており、医療費の増加は大きな社会問題になっています。

肺がん患者さんの受診契機別症例数と外科治療の割合(2007-2021年)
肺がん患者さんの治療法別患者数割合(2007-2021年)
肺がんの組織型別患者数分布 全肺がんおよび手術例(2007-2021年)
肺がんの病期別患者数分布 全肺がんおよび手術例(2007-2021年)
肺がん年次別・術式別症例数(2011-2021年)
肺がん手術症例 病理病期0-2期生存曲線(2007-2021年)
肺がん手術症例 病理病期3-4期生存曲線(2007-2021年)
肺がん手術症例 病理病期別生存率(2007-2021年)
全肺がん症例 臨床病期0-2期生存曲線(2007-2021年)
全肺がん症例 臨床病期3-4期生存曲線(2007-2021年)
全肺がん症例 臨床病期別生存率(2007-2021年)

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