LOADING
独立行政法人国立病院機構 まつもと医療センター

肝臓がんとは

 肝臓がんのほとんどは、慢性肝炎、肝硬変という変化を経て発症します。 慢性肝炎とは肝臓に慢性的な炎症が起きることで、肝硬変は肝臓の慢性炎症が原因で、肝細胞が線維化し、肝臓が硬く小さくなる事です。

日本における肝細胞がんの最大の原因はC型肝炎であり、70%弱を占めます。B型肝炎も含めると肝炎ウイルスによって起こる肝臓がんは肝細胞がんのうちの90%程度を占めています。そのほか、過剰な飲酒によって起こるアルコール性肝炎や、中性脂肪が蓄積することによる非アルコール性脂肪性肝炎、免疫機能の異常によっておこる自己免疫性肝疾患なども肝細胞がんを起こすことがあります。

現在はウイルス性肝炎を原因として発生する肝臓がんが多くを占めますが、近年ウイルス性肝炎の治療は大きく変わってきており、今後はウイルス性肝炎の方が減少することも予想されます。

 肝細胞がんは、ウイルス性肝炎や肝硬変を背景に出現することが明らかになっています。例えば、C型慢性肝炎では肝炎が進行するに従い、発がん率が高くなり、進んだ慢性肝炎では年率3%、肝硬変では年率5~7%と報告されています。

肝臓がんの診断

 肝細胞がんの診断は2つの方法で行います。2つの方法を組みあわせて早期禁断に努めますが、1つは血液検査で腫瘍マーカーとよばれる検査を定期的に行うこと、もう1つは画像診断と呼ばれる検査を行うことです。腫瘍マーカーには2種類あり、アルファフェトプロテイン(AFP)とPIVKAIIがあります。どちらも正常な肝細胞ががんになったときに造られる蛋白で、血液検査で上昇すれば肝細胞がんが疑われます。アルファフェトプロテインは肝炎の強いときにも上昇することがあり、肝細胞がんに特有とされるAFP-L3分画を測定すると鑑別に有効です。PIVKAIIはビタミンKの欠乏や血液凝固を阻害するワーファリンを服用している場合にも増加します。

 もう1つの画像診断検査には、超音波検査、CT検査、MRI検査があります。これらの検査はお互いに利点があり、組み合わせて行っています。超音波検査は最も簡単に行え、患者さんへの負担も少ない検査です。軽い慢性肝炎の患者さんでは6か月に1度程度、進んだ慢性肝炎や肝硬変では3~4か月に1度行っています。CTやMRI検査は、超音波検査で異常が認められる場合や進んだ慢性肝炎や肝硬変では、年に1~2回行っています。 このような血液検査や画像診断を繰り返し行うことは患者さんにとってかなり負担になりますが、肝細胞がんをできるだけ小さい段階で発見することが大切なため、患者さんの理解を得て行っています。

肝細胞がんの治療法の選択

 肝細胞がんの治療法は、大きく①手術療法 ②局所療法 ③血管カテーテルを用いる治療に分けられます。局所療法は、以前にはアルコール(エタノール)の注入療法が行われていましたが、現在ではラジオ波焼灼術(RFA)が用いられています。どの治療法を選択するかは、肝細胞がんの大きさや個数、肝臓の機能(予備力)などによって左右されます。

 局所療法の対象は、原則的には腫瘍の大きさが3cm以下、3個以内です。

 手術療法の場合は、肝臓の予備力が良くないと手術後に肝不全(黄疸・腹水・脳症)が出現します。そのため、術前に検査を行って、肝予備力を判断します。手術前の肝予備力や切除後の残された肝の機能によって、肝臓を切除できる範囲が決まってきます。

 一方、血管カテーテルによる治療は経肝動脈性塞栓術と呼ばれ、手術や局所療法ができない場合、特に肝細胞がんが多数存在する場合に用いられます。 肝臓の予備力が良い場合で、肝細胞がんが1個(単発という)の場合、大きさが3cm以上であれば手術の成績が局所療法より優れていると報告されています。一方、2cm以下の場合は局所療法と手術療法では治療成績に差がないとされています。2cmから3cmの間では肝細胞がんの部位や肝臓がんの性質(分化度)によって判断します。 肝臓の予備力が良くない場合は、ラジオ波焼灼術や血管カテーテルによる治療が選択されます。

 当院では外科・放射線科と連携し適切な治療を行うように努めております。肝臓がんに関してお困りであればお気軽に御相談ください。

診療科情報

肝臓内科のページへ